2015年5月16日土曜日

Wells Reportを読んでみる①

Wells reportに目を通されたとのぱいさんのコメントを読んで、ちょっと読んでみようかな、と思いました。

が、なんせ243ページ、第二回があるかはわかりません。。。汗

最初の21ページまでを読んでみました。
アメリカ人の書いた長いレポートを読んだ経験がなかったので、こうやって書くんだー、というのが第一の印象です。

次に感じたのは、執筆者が主観を捨て、可能な限り客観的に事実を見つめようとしている点です。
Patriots側は「結論ありきだ」と文句を言っていますが、ここまで読んだ限りではそんな感じは受けませんでした。

この20ページを読むのにかなり時間がかかる私の英語力での解釈ですので、その辺はご了承ください。




最初に結論が述べられていました。More probable than not という文面が複数回登場します。


【結論】
2015/1/18にGillette Stadiumで行われたAFCチャンピオンシップで試合に使われたボールの空気圧をPatriotsが故意に低くしていたと判断できる。
この件には Jim McNally(Patriotsのロッカールーム用具係)と John Jastremski(Patriots用具係り)が関わっていた。
また、Tom Brady(Patriots QB)は少なくともこうしたことが行われていたことを知っていたと推察される。
今回の調査ではこれ以外にこの件に関わった人物・組織は確認されなかった。


ここから状況証拠の積み上げが始まります。

【状況証拠】

  • 試合前ロッカールームでMcNallyが審判の一人(Anderson氏)にBradyは(規定値下限の)12.5psiを好むことを話した。
  • McNallyは前シーズンまで32年間期間契約もしくはパート契約でPatriotsに雇用されていたが、2014-15シーズンは時給契約となっていた。
  • 試合前の空気圧チェックでPatriots側が用意したボールのほとんどは(規定値下限の)12.5psiに設定されていたが、2つは規定値以下であったため、審判により、空気が足された。
  • Colts側のボールは13.0-13.1が大半で、1つか2つ12.8-12.9であった。Colts側の目標値は13.0psiとのこと。
  • 試合開始前にAnderson審判がボールを持ってフィールドに向かおうとしたところ、そこにボールはなかった。NFL審判歴19年目のAnderson審判にとって、こんなことは初めてであった。
  • 監視カメラの映像から、ボールは審判の許可も、審判への伺いもなしに McNally がロッカールームから勝手に持ち出していた。
  • Gillette Stadiumでここ最近審判を務めた人たちに確認したところ、審判に確認することなくMcNallyがボールを持ち出したことはこれまでなかった。
  • McNallyは二つの大きなバッグ(PatriotsとColtsのボールが入った)を抱えてフィールドに向かう途中、バッグを持ったままトイレに入り、鍵をして約1分40秒後に出てきた。その後フィールドに向かった。
ここから二人がやり取りしていたテキストの話になります。
  • この試合の数か月前にはMcNallyとJastremskiはゲームボールに関してテキストをやり取りしていた。
  • 10/17のJets戦の後、Bradyはボールの空気圧が高すぎることに強く文句を言った。試合前の確認で空気圧が低かったのを審判が確認し、足した後確認しなかったために、16psiほどになっていた模様。そのためBradyが怒った。
  • その後Jastremskiはニードルを用意したからそれをお金とスニーカー?に包んでMcNallyに渡すから、11-11.5くらいになるようにしろよ、と指示をだした。
ここら辺はテキストがかなり砕けた表現でやり取りされているので理解が難しいです。
  • そのやり取りの中で、Bradyはお前(McNally)に感謝することになるぜ、というような表現もされる。
  • 1/10にMcNallyはBradyのサイン入りのボール2個と、サイン入りの試合着用ジャージをロッカールームでBradyとMcNallyから直接もらった。
  • また、5/9のテキストではMcNallyが自分自身を「deflator(空気を抜く人)」と呼んでいる。
ここで試合にもどります。
  • AFCチャンピオンシップでインターセプトした際にColtsの選手が空気圧が低いことに気づき、サイドラインでColtsが測定したところ、規定最低値の12.5psiよりも低かったため、オフィシャルに連絡した。
  • Coltsは試合前にPatriotsが空気圧を故意に低くしている可能性があることをリーグに伝えていた。
  • 疑惑が強まったため、NFLは試合前の様子を審判に確認した。審判は通常通り規定値に入っていたことを確認したことを説明。
  • ハーフタイムにロッカールームで測定を実施した。Patriotsのボールはインターセプトされたものを除く11個、Coltsのボールは4個(時間切れとなり4個だった)を測定。
  • 二人が二つの異なるゲージで測定したが、Patriots側のボールは11個の内1つも規定最低値である12.5psiを満たさなかった。
  • Coltsのボールは二つの測定の内少なくともどちらかは12.5psi以上を指していた。
  • 後半開始前にすべての空気は規定値に空気圧が戻された。
  • インターセプトされたボールは個別に3回の測定が行われたが、どれも12.5psiを満たさなかった。このボールは別で管理され、その後試合には使われなかった。
この状況で試合後にMcNallyにインタビューを行ったそうです。
  • McNallyがスタジアムを離れる前にNFL Securityがインタビューを行った。McNallyはボールをトイレに持ち込んだことに触れなかった。
  • McNallyはロッカールームからフィールドにいつも通り直接向かったと供述した。
  • その後のインタビューでMcNallyはトイレに寄った理由を説明したが、理由については二転三転し、一貫性はなかった。
【検証実験】
  • 寒いスタジアムとあたたかいロッカールームでの気温差による空気圧の変化等、その後シュミレーションを行ったり実際に同じような環境を再現したが、専門家の結論としては、今回Patriotsのボールに起こったほどの急激な空気圧変化は起こりえない、というものだった。
  • また、試合の際に使用されたゲージの精度も問題ないことが確認された。
  • PatriotsとColtsの間での空気圧の減少率の差は機械や人的要素ではないと言える。
  • (Belichickがインタビューで指摘したように)試合中に使用されたことを加味しても、今回の変化は科学的には説明できないといえる。
  • 最後にニードルを使って空気を抜くのにどのくらいの時間が必要かを検証したところ、慣れていれば1分40秒以内(トイレに入っていた時間)に13個のボールの空気を抜くことは可能だ、ということも検証された。

  • このことから、More probable than not で審判のチェックを受けた後で、NcNallyが無断でボールを持ち出し、トイレの中でJastremskiから受け取ったニードルを使って13個のボールの空気を抜いた、と言える。
  • 試合の1週間前にBradyから価値のあるサイングッズをもらっていることからも三人がある程度認識を共有していたと判断できる。
  • 加えて、疑惑が表になった試合終了後すぐ、JastremskiはMcNallyに1時間以内に3回の電話をかけ、37分11秒の会話をした。同時に、JastremskiとBradyとの電話・テキスト回数も著しく増加した。
【追加情報】
  • McNallyは追加インタビューの中で、ロッカールームからフィールドにボールを持ち出すのは日常茶飯事で、ボールを持ったままトイレによることもしばしば、と回答した。
いつから、どのくらいの頻度でこういった不正が行われていたかはわからないが、Tom Bradyが少なくとも二人が行っていた不適切な行動に気づいていたことは More probable than not である。

【その他の事実】
  • それまで6か月間一切電話もテキストもしていなかったBradyとJastremskiであるが、疑惑発生直後からコンタクトを取り出し、Jastremskiの電話がチームに回収されるまでの間、1/19に少なくとも2回電話をし、25分2秒、1/20にも2回9分55秒、1/21に2回20分52秒の通話をした。
  • また、Bradyは1/19にJastremskiをQBルーム(Bradyの部屋)に直接呼び出した。これはJastremskiの20年の職歴の中で、初めてで唯一の呼び出しである。
  • BradyはJastremskiをなだめるようなテキストを送った。
【推察】
  • ロッカールームに関わる人間がBradyの許可なしにボールの空気圧を変更させることは考えにくい。
  • 二人へのインタビューをしてみても、彼らが独自に勝手にやった、とは考えられない。
【Bradyへのインタビュー】
  • Bradyはインタビューの中でチーム関係者がかかわった空気圧不正問題への関与を否定した。
  • BradyはAFCチャンピオンシップゲームの前までMcNallyという人物を知らないと主張。
    • これは周辺証拠から判断すると明らかな嘘で、Jastremskiはインタビューの中でBradyはMcNallyが何をやっている人かを知っていると証言している。
    • McNally自身もBradyからBradyの空気圧の好みを直接聞いたことがある、と証言している。

レポートはここでこれまでの状況証拠を重ねて書いて、結論を出した理由を説明します。
そのあとに別段で不満を述べています。


【Patriotsの非協力】
  • Patriotsはインタビュー等に協力的な姿勢を見せたが、最も重要だと思われるMcNallyへのフォローアップインタビュー実施を拒否した。
    • 時間も場所もMcNallyの都合のいいところでいいよ、と提案したにもかかわらず、PatriotsはMcNallyへのインタビューを拒否した上に、McNallyにインタビューの依頼があったことさえも伝えなかった。
  • この態度はリーグへの背信であり、「全面的に協力する」とあらゆるメディアで公言していることに対して完全に矛盾する
【Bradyの非協力】
  • インタビューを受け、質問に答えてくれたが、資料の提出は拒否した。
  • 特にテキストに関しては、手に持ったままで、調査対象の内容に関することだけでかまわないから見せてくれ、とお願いしたにも関わらず、協力は得られなかった。電話や電子機器を提出してくれ、といったわけでもないのにだ。
  • このことにより、Bradyに関する疑惑への証拠は不十分なものになってしまった可能性がある。
【Patriotsの不誠実】
  • 調査の過程でPatriotsは試合を裁いた審判や数名のNFL幹部、AFCチャンピオンシップや調査に立ち会った特定のNFL Security代表者の「品位」や「客観性」に疑問を投げかけてきた。
  • 我々の調査の過程ではPatriotsが指摘するような証拠は見つからなかったし、これらの人々は中立を保っていると信じている。


ながーくなってしまいましたが、最初にはこんなことが書かれていました。
TVで流れているニュアンスとはだいぶ違うな、という印象です。
このレポートを読むと、Bradyへの処分は妥当かな、と思います。
(サインのくだりは連動性にかける気がしましたが)


ご興味のある方は コチラ で原本確認できますよー。



2 件のコメント:

  1. レポートの詳報、お疲れ様&有難う御座います。
    英語が判らん+例え日本語でも老眼なので読むのが大変+各事象の因果関係等が覚えきれず論理的考察が不能と、自分で原文読むことを忌避するに充分な合理的理由があるので、HJさんの解説を全面的に信頼し、かつお縋りしようと思います(笑)。
    確かに仰る通り、状況証拠は真っ黒けに近いし、「俺は知らん、無関係だ!」というのも白々しい感じがしますが、この事件個別のことよりも、自分はこういう「疑わしきは厳罰を持って対処すべき」的な対応というのはライス他のDV事件で痛い目にあったNFL独自の傾向なのか?それともテロ対策等で「被告人の利益」なんてものは考えてられなくなった合衆国全体の風潮なのか?そっちの方が気になりますね。どうなんでしょ。

    あと、この件とは全く別の私事で、HJさんにご相談したいことがあり、コメント記入者欄をGoogleアカウントにしてみましたが、これで自分のGmailアドレスがHJさんにも表示されるんでしょうか?もし表示されている様なら、お時間のある時で結構ですので、ご連絡をお待ちしております。 
    Liger より

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    1. Ligerさんコメントありがとうございます。

      ごめんなさい、残念ながらGmail表示されませんね。
      コメント即時公開しないようにしたので、コメント欄にアドレスいただければ、こちらからメールいたしますよ。

      さて、レポートですが、あれから全然進んでません。。。なんやかんやで忙しくて。「疑わしきは厳罰を持って対処すべき」的な対応は今回はスポーツのルールに関してだからだと思います。
      殺人や犯罪のケースではそこまで極端でないような気はします。黒と白ははっきりさせたがる傾向はありますが、疑わしいだけでは厳罰はないと思います。

      現在テレビでの論調はBradyは素直にやってました、すいませんでした、と言った方がいい、という感じになっています。
      プレイコール盗んだとかでなくて、空気を抜いて握りやすくした「だけ」で、どこまで試合に影響があるか未知数だから、という背景のようです。
      彼のこれまでの実績と将来の殿堂に向けて、過ちは過ちとして認めたほうがみんなすっきりして、次に進めるんじゃないか、という論調が多いですね。
      Kraftオーナーのコメントも擁護から「Bradyは一度も自分に嘘を言っていないし、彼がやってないと言っているから」、といつぞやの強気な発言からだいぶトーンダウンしている感じがしますし、何か動きがあるかもしれませんね。

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